問2.45 市販されている一般的なポリプロピレン(PP)の分子量分布(PDI)広い理由は、マルチサイト触媒であることが理由とされています。具体的に起こっている現象を説明してください。

解答2.45
J.B.P. Soares, A.E. Hamielec, Industrial & Engineering Chemistry Research, 34, 1167-1189 (1995)
Matsko, M.; Zakharov, V., Polymers 2023, 15, 4316.
Xuemin Yin, Yawei Qin, Jin-Yong Dong, Ind. Eng. Chem. Res. 2020, 59, 5, 1836–1844
He-xin Zhang, Young-joo Lee, Joon-ryeo Park, Dong-ho Lee & Keun-Byoung Yoon, Polym. Bull. 67, 1519–1527 (2011).
具体的には、以下の3つのメカニズムが同時に働くことで、全体の分子量分布がFlory分布を大きく超えて広がります。
・活性点ごとの「生長速度」と「連鎖移動速度」の比のバラつき
固体チーグラー・ナッタ触媒上では、チタン原子の周囲の配位環境(立体障害や電子密度、チタンの価数など)がサイトごとに異なります。高分子量サイト:モノマーの配位・挿入が非常に速く、連鎖移動が起こりにくいサイト。低分子量サイト:モノマーの取り込みが遅く、頻繁に連鎖移動が起こるサイト。
その結果、反応器の中では「平均分子量が数万のFlory分布」から「平均分子量が数百万のFlory分布」まで、性質の異なる複数のFlory分布が同時に生成されています。市販のPPのGPC曲線は、これらが足し合わされた「重ね合わせであるため、幅が大きく広がります。
・水素応答性(連鎖移動能)の不均一性
工業生産では、分子量を目標値に調節するために反応器へ水素を添加します。この水素に対する感度(水素応答性)も活性点ごとに全く異なります。ある活性点は水素に対して非常に敏感で、すぐにポリマー鎖を切り離して低分子量ポリマーを量産します。一方で、水素が近づきにくい(立体的に遮蔽された)別の活性点は、水素が存在しても無視して超高分子量成分を伸ばし続けます。この水素応答性の格差が、高分子量側と低分子量側の両極端への広がりをさらに助長します。
・立体規則性(Isotacticity)の分布との連動
固体触媒上の活性点は、ポリプロピレンのメチル基の向きを揃える能力(立体選択性)にも格差があります。一般に、立体選択性が高い(アイソタクチックな鎖を作る)活性点ほど高分子量のポリマーを生成し【水素感度が低い】、立体選択性が低い(アタクチックな鎖を作る)活性点ほど低分子量のポリマーを生成する【水素感度が高い】傾向があります。

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