問2.44 市販されている一般的なポリプロピレンの分子量分布(MWD)は、Flory Most Probable Distributionsよりも広いです。この理由を説明してください。

解答2.44
Flory分布は「すべての成長末端が、常に完全に同一の確率でモノマーを取り込み(生長)、同一の確率で連鎖移動(停止)を起こす」というシングルサイト(均一系)の前提に基づいています。PP重合も素反応に基づく理想的な動力学解析では、PDI=2になります。
João B. P. Soares, Timothy F. L. McKenna, Polyolefin Reaction Engineering, Wiley-VCH, pp.187-199 (2012)
しかし、市販のPPを製造する固体触媒の表面は複雑な結晶欠陥を抱えており、特性の異なる複数の活性点がランダムに共存するマルチサイト(不均一系)となっています。市販されている一般的なPPの分子量分布(MWD)が、単一の活性点から得られる理想的なFloryの最確分布(Flory’s Most Probable Distribution、理論値PDI = 2.0)よりもはるかに広い理由は、工業用固体チーグラー・ナッタ触媒が持つ「活性点の不均一性(マルチサイト性)」にあります。
数学的には、市販PPのGPC曲線は、個々の活性点が生成する独立したFlory分布に、各活性点のポリマー生成比率(重量分率)を掛け合わせて足し合わせたものとしてビーク分離できます。
João B. P. Soares, Macromolecules 2025, 58, 11060−11075
João B. P. Soares, Macromolecules 2025, 58, 13519−13532
João B. P. Soares, Can J Chem Eng. 2023;101:4955–4978.

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