問2.58 高圧法LDPEは溶融張力は高い一方で、フィルムの 引裂強度が低いことが知られています。分岐構造があると裂けやすい理由を説明してください。

解答2.58

高圧法LDPEは溶融張力は高い一方でフィルムの引裂強度が低い理由は、その分岐構造(長鎖分岐)が、溶融状態と結晶化後の構造(タイ分子の形成など)に相反する影響を与えるためです。

  1. 溶融張力が高い理由:長鎖分岐による分子絡み合い
  2. 引裂強度が低い理由:タイ分子の不足と結晶構造

引裂強度などの機械的特性は、結晶ラメラ間を繋ぐタイ分子(tie molecules)の数に大きく依存します。LDPEは高度に分岐したコンパクトな分子構造を持つため、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)のような直鎖状分子と比べて、ラメラ間に跨るタイ分子を形成しにくい性質があります。

A. SIEGMANN, Y. NIR, Polym. Eng. Sci., 27 (15), 1182 (1987)

Byoung-Ho Choi, Rajen Patel, A. Willem deGroot, Mehmet Demirors, Lizhi Liu, Kenneth Anderson, Sungsoo Na, POLYM. ENG. SCI., 54, 1038–1046 (2014)

配向への敏感さ: フィルム成形プロセス(インフレーション法など)では、分子鎖が機械方向(MD)に配向します。LDPE(特に分岐の多いタイプ)は、結晶配向が高まると引裂強度が急激に低下しやすい傾向があります。

Yi Ren, Ying Shi, Xuerong Yao, Yujing Tang, Li-Zhi Liu, Polymers, 11, 434 (2019)

ラメラ構造の異方性: LDPEの blown フィルムは、配向によって「ねじれたラメラ」が互いに連結したインターロッキング(かみ合わせ)構造を形成します。高倍率で延伸された場合、MD(機械方向)の引裂強度はある程度維持されるものの、TD(横方向)の強度が著しく低くなるなど、強い異方性が生じ、結果としてフィルム全体としての「裂けやすさ」に繋がります。

X.M. Zhang, S. Elkoun, A. Ajji, M.A. Huneault, Polymer, 45, 217–229 (2004)

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