解答2.52
藤田照典, 化学と教育, 72 (12), 523-526 (2024)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/72/12/72_523/_article/-char/ja
外崎究, 谷池俊明, 寺野稔, 高分子論文集, 68 (5), 326-331 (2011)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/koron/68/5/68_5_326/_article/-char/ja
クロム触媒(Phillips触媒)を用いて製造される高密度ポリエチレン(HDPE)に長鎖分岐(ヘキシル基より長い分岐)が生成するメカニズムは、主に重合中に系内で生成した高分子量α-オレフィン(マクロモノマー)の再挿入によるものと考えられています。
- 連鎖移動反応によるα-オレフィンの生成 重合反応の過程で、エチレンへの連鎖移動反応が起こります。具体的には、クロム(Cr)活性点に結合しているポリマー成長鎖のβ-水素(Cr原子から2番目の炭素に結合した水素)が、配位したエチレン分子へ移動します。これにより、末端に二重結合(ビニル基)を持つ分子量の大きな炭化水素(マクロモノマー)が系内に放出されます。
- α-オレフィンの再挿入 このようにして反応系内(in situ)で生成したα-オレフィンが、再び触媒の活性点に挿入されます。この再挿入によって、主鎖から伸びる長い枝、すなわち長鎖分岐が形成されます。
- 分岐生成の制御因子 ・収量依存性: 実験的な検討により、長鎖分岐の生成頻度はポリエチレンの収量に依存することが明らかになっています。これは、重合が進むにつれて系内のα-オレフィン濃度が上昇し、再挿入が起こりやすくなるためです。 ・活性点の構造: クロム種の核数も影響を与えます。単核構造のクロム種もα-オレフィンの挿入能を持ちますが、二核種上ではオレフィンメタセシス反応が促進され、メチル分岐などの短鎖分岐の起源となるプロピレン等の生成が活発になると推定されています。

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