解答2.51
林田晴雄, 成形加工, 13 (6), 355-359 (2001)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/seikeikakou1989/13/6/13_355/_article/-char/ja
Roedel, M. J., J. Am. Chem. Soc., 75 (24), 6110–6112 (1953)
Costas P. Bokis, Sundaram Ramanathan, John Franjione Alberto Buchelli, Michael L. Call, Allen L. Brown, Ind. Eng. Chem. Res., 41, 1017-1030 (2002)
高圧法ポリエチレン(主として低密度ポリエチレン:LDPE)の製造では、超高圧(100〜300 MPa)かつ高温(150〜300℃)の条件下で、ラジカル重合によってエチレンを重合させます。この反応中に、成長しているポリマーラジカルが自分自身または他のポリマー鎖から水素原子を奪う「連鎖移動反応(分子内・分子外)」が起こることで、特徴的な分岐構造(短期鎖分岐および長期鎖分岐)が形成されます。PSやPMMAではラジカルの活性が低く、また、分子運動が少ないために、以下のような現象が起こらないので、分岐が形成されません。
- 短期鎖分岐(SCB)の生成メカニズム:[バックバイティング] LDPEに最も多く含まれるブチル基(炭素4個)やペンチル基(炭素5個)などの短い分岐は、分子内連鎖移動反応によって生成します。この現象は、分子が自身を噛むような形になることから「バックバイティング(Backbiting)」と呼ばれます。擬似的な6員環・7員環の形成ポリマーの成長末端(ラジカル)は柔軟に折れ曲がることができるため、バックバイティングを起こす際、空間的に最も安定でアプローチしやすい6員環(または7員環)の遷移状態を形成します。水素の分子内移動成長末端のラジカルが、自身の根元側(4つまたは5つ遡った炭素)にある水素原子を急襲して奪い取ります。末端の安定化と内部ラジカルの生成水素を得た元の成長末端は通常の炭化水素(飽和)となって成長を停止しますが、水素を奪われた主鎖の途中の炭素に新たなラジカル(活性点)が移動します。再成長この新たな活性点から再びエチレンの重合が始まるため、結果としてブチル基やペンチル基の短い枝が主鎖から突き出す形になります。
- 長期鎖分岐(LCB)の生成メカニズム:分子外連鎖移動主鎖と同等の長さを持つような長い分岐は、分子外連鎖移動反応によって生成します。他分子(または遠くの主鎖)からの水素引き抜き成長末端のラジカルが、自分自身ではなく、近くにある別のポリマー鎖(あるいは同じ分子でもはるか遠く離れた主鎖部分)の炭素から水素原子を奪い取ります。ポリマー主鎖上への活性点生成水素を奪われた側のポリマー鎖の途中に、新たなラジカルが形成されます。長大な枝の成長その主鎖途中のラジカルからエチレンの重合が進行します。すでに大きく育っているポリマー同士が結合するような形になるため、主鎖と見分けがつかないほど長い炭素鎖の分岐が形成されます。
- その他の副反応: 末端二重結合反応: 重合停止反応(不均化停止)やエチレンモノマーへの連鎖移動で生じた末端二重結合を持つポリマーが、ラジカルと反応してLCBを形成することもありますが、その寄与はポリマーへの連鎖移動に比べると限定的です。β-開裂(β-scission)により、生成した内部ラジカルが連鎖移動の後に開裂することもあり、これは分子量を低下させ、ビニル基などの末端構造を生成する原因となります

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