問1.6 PPでは、特定の顧客向けにカスタマーグレードが存在します。カスタマーグレードが必要となる理由を説明してください。

解1.6 カスタマーグレードは、メーカーとユーザーの共通のメリットがある場合に成立します。大きくは二つの視点があり、リスクに備えること、用途に特化することです。
海外ではForce Majeureは頻繁に起こりますが、日本では暗黙の安定供給が考えられていました。大手ユーザーでは購買主体で再生業者・輸入業者などからスポット買いをしている場合がありました。しかし、震災を経験して、納入義務の無い格安品を継続して調達することはできないことが実体験として分かりました。一例として、長期在庫を持つことはお金を寝かせることになりますが、安定した製品を、安定した価格で、長期に売買することが、メーカーとユーザーの共通の利益になる場合があります。
 PPは、自動車部品、家電、包装材など非常に多様な分野で使用されており、用途ごとに要求される物性・成形性・加工安定性が異なります。それだけではなく、一例としてフィルムグレードをとっても、農業用フィルムとコンデンサー用のフィルムでは求められる性能が違います。前者では耐候性や防曇性が求められますが、後者では耐絶縁破壊が必要です。すべてを満足するPPは、結局高価なものになってしまうので、二つを作り分けて、特定のユーザーに販売することに合理性があります。
 自動車市場はPP全体の中では少量でしかありませんが、カスタマーグレードが多く使われています。各社ごとに車の設計思想が違い、求められる材料物性も変わります。歴史的な経緯で、金属から樹脂に代替してきましたので、一般のPPよりも高い物性が必要であり、PPを複合化して使う技術がメーカーとユーザーの間で蓄積されてきました。その成果がカスタマーグレードであり、ノウハウの塊ということができます。

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