問1.2 PPの物質特許は、1989年にようやく確定しました。性能では劣るけれどもPhillipsのHogan & Banksが基本特許を得ました。Ziegler-Nattaが物質特許を取れなかった理由を推察してください

解答1.2 特許ですから、内容が同じであれば、先願であること重要です。
Phillips(Hogan & Banks 系)の出願群は、1953 年の早期出願を起点とて、後の US 4,376,851になりました。内容は後述。
Montecatini/ Natta系 の特許群は、1954–1955 年イタリア出願し、それを起点としてUS出願しています。
他社も同時期に出願し、世界同時多発的発明とも言える状況でした。
1958年に、米国特許庁は5社(Phillips、Standard Oil、Du Pont、Montecatini、Hercules)の間で審判を開始し、1989年、最終的に米連邦裁判所が Phillips 側の勝利を確定させ、数十年にわたる争いに終止符が打たれました。
Phillips US 4,376,851 の技術的ポイントや主張範囲が、最終的にNattaの発明を包含したとことは、我々が特許を書くうえで重要な示唆を与えてくれます。
新規性・進歩性は、結晶性を有する通常固体のポリオレフィンを得る方法およびその生成物を提供することです。実用的には、Montecatiniの製品より結晶性は低くて使えないのですが、特許としては先に言ったもの勝ちです。
検証可能な方法で規定しています。赤外分光法および X 線回折法で識別可能な、規則性を有する構造、従来のアモルファス(非結晶性)ポリマーと比較して高融点、通常の溶媒(メチルイソブチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等)に対して不溶(沸点程度まで)
私がPPメーカーで働いていた1989年に物質特許が決着したので、社内で話題になりました。そして、特許クレームの記載方法として、現実の測定機器でパラメータを規定することが指導されました。

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