問1.7 PEやPSには様々なランダム共重合体があるが、PPの場合エチレンをコモノマーとしたランダムPPしかない。これは、ランダム共重合と立体規則性の制御を両立する触媒が無いことによる。その一方で、PP系の複合材料は大量に使われている。その理由を説明してください。

解1.7 メタロセン(M)触媒によるPE重合が一つの対比事例です。ZN触媒で製造したC8-LLDPEは、HDPEとEORが混合したような不均一な状態でした。M触媒により、コモノマー組成と分子量が均一な、C8-LLDPEが製造できるようになりました。しかし、これに相当するPP系の共重合体は、市場にありません。
その一方で、PPのエラストマー改質や、フィラー充填、繊維強化などが幅広く行われています。これは、PPのTmとTgが絶妙なバランスにあること、結晶化速度が丁度良いことと関連しています。
我々の生活で水は最も基本的なものです。水の融点0℃と沸点100℃は、様々な場面で関係してきます。煮る時の温度は100℃、スチームであれば130℃、電子レンジでチンする用途に使うためには、このような温度に耐える必要があります。そこで、HDPEの130℃というTmでは不足するのです。
一方、冬-20℃でも生活している地域があります。自動車が動かなくなっては困ります。PPのTgは0℃なので氷点下では脆くなっています。そこで、EPRなどのエラストマー改質をすることになります。改質用のエラストマーのTgは-60℃程度であり、PPの低温特性を広げることができるのです。
 PPが改質しやすいと言われますが、本質的に無極性高分子なので、極性の高分子やフィラーとブレンドすれば、著しく相分離したり、界面剥離します。改質したPPが多量に使われる理由は、価格が安いためです。価格を安くできる理由が重要なのです。EPR、EBR, EORなどのエラストマー、およびタルクのようなフィラーをブレンド時に界面を強化する相容化剤は必要がありません。サイジングしたガラス繊維を添加するときには、酸変性POが必要ですが、単純にブレンドするだけで、製品になる組み合わせが多いのです。
この背景にある技術的な理由は、結晶化挙動と溶融粘度です。

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